Netflixで”WEED THE PEOPLE”を視聴した。

WEED THE PEOPLEの日本語サブタイトルは「大麻が救う命の物語」。アメリカ、カリフォルニア州で、大麻オイルで治療を行う子供の癌患者とその家族、患者家族をサポートする大麻カウンセラーや医師に密着したドキュメンタリー作品。
主な登場人物
カウンセラー、医師
Mara Gordon: Founder, Aunt Zelda’s Inc.
ドキュメンタリーで登場する大麻カウンセラー。大麻オイルの4,500種の組み合わせの中から、依頼者に合った大麻の治療法を見つける。依頼者の了承を得て治療データを収集し、他者に役立てている。患者家族をつなぐ、映画の主要な人物の一人。

Mara Gordonは、TEDにも登壇している。
Bonni Goldstein, MD
医師。患者に対して、医療大麻を使えるかどうか法的に判断する。
ドキュメンタリーでは、Bonni Goldsteinがその患者に医療大麻を使えるかどうか法的に判断し、Mara Gordonが大麻オイルのサポートを行うという協力関係に見えた。
患者家族
5組の患者家族の物語で構成されている。家族へのインタビューでよく”キーモ”という単語が出てくるが、化学療法のことを”キーモ(chemo)”と呼ぶようだ。
家族1: 男の子が癌患者
医師から渡された治療の計画書は、子供の癌が少ないことなどを理由として1970年代に作られて基本的に変わっていないという。化学療法の副作用を抑えるために大麻オイルを使い始めた。
母親の言葉が興味深い。
癌研究に数十億ドルが投じられている今の時代に、頼みの薬がキッチンで作られているなんて
母親によると、メサドンは知能が低下という面でかなりやばいらしい。
患者の男の子は、無事回復して学校にも行けるようになるが、その時の教師の服装についての注意事項が、一般の大麻への認識を示すものとして興味深い。
大麻柄の服は学校にふさわしくない、学校に持ってきていけないものは服の柄でもだめ
家族2: 13歳で癌が見つかった男の子
転移が進み、脊椎がはずされてスケールゲージが入れらたという。話を聞くだけで壮絶。インタビュー時は17歳で、ピカチュウのヘッドキャップをかぶっている。
家族3:脳に大きな腫瘍がある女の子
当初、Mara Gordonの助言で大麻オイルを使っていたが、別のルートで大麻を入手するようになり、関係に亀裂が入る。ある意味、この映画のハイライトの一つ。
“もう私達の患者じゃない。単なる製品のユーザーね。”
“あなたは私をトレーニングしてくれた(笑)最高の薬をもらい、扱い方もわかった。世話の仕方を訓練してもらい、効果が出た。向こうは自家栽培で100ドル安い。あなたの薬を信用していないのではなくて、お金の問題なの”
“本当に残念だ、患者の女の子を回復させたのは、私達のプロトコルと薬だから。でも、すぐに忘れてしまうのね”
母親は、CannaKidsというウェブサイトを立ち上げて起業している。

家族4:男の子
医師から、余命6ヶ月~9ヶ月といわれた。大麻オイルで治療を行うが、残念ながら、癌との闘いに敗れた。父親が著名人のようだ。

家族5:女の子
化学療法の影響で、3歳半で体重8.5キロになってしまった。Mara Gordonの大麻で治療を進める。保険が効かないので、月に大麻費用に3000ドル必要だったこともある。父親は消防署で働いているが、売れるものは何でも売って費用を捻出したという。
ドキュメンタリーで語られたアメリカの大麻の歴史
アメリカでは1937年の大麻課税法で、実質的に大麻が禁止されたという。米会議は1970年に、大麻を乱用の危険性が高く医療用ではないとしてスケジュールIに分類した。カテゴリーIは、ヘロインやLSDと同じ分類になる。一方、コカインは、”限定的な医療用途があるため”一つ下のカテゴリーIIに分類される。
連邦政府は”研究が不十分で大麻はスケジュールIから外せない”という。その一方で”スケジュールIだから研究させない”といい、何もできない状況になっているが、アメリカ以外の国では大麻の研究が進められているので、それが大麻をスケジュールIから外すのに使える可能性がある。
大麻の抗癌作用の証拠を1974年に初めて示したのは、米国立癌研究所
(National Cancer Institute)だという。画面には以下の論文が表示されていた。

CNNニュースの場面では、番組内で次のようなやりとりがある。
アメリカ政府は、脳の保護剤としての大麻の特許を保有している。なぜ政府が特許を?政府は特許を持つ一方、大麻は医療に使えないとしている。これは前代未聞の偽善だ。
画面は以下の特許が表示されていた。
イスラエル
イスラエルでは、あらゆる患者に大麻を処方するという。大麻は国家免許制で、国の管理下で栽培され使用されている。研究も国の監督下で行われている。
David”Dedi”Meiri, PhDによると、”THCとCBDは癌を殺せる”という。
アポトーシスで細胞が自殺する。正常な細胞には制御機構を持ち、問題がないか自己監視している。問題があれば自殺する。癌細胞はこの能力を失っている。大麻はこの能力を取り戻す。
WEED THE PEOPLE
ドキュメンタリーは、2017年のカリフォルニアで患者家族が集まるシーンで終わる。闘病中の場面を振り返ると、最後の場面は驚かずにはいられない。科学療法の副作用を大麻が抑えて、より化学療法が効果を発揮するように働いているように感じた。化学療法を行っている病院の理解も必要だということが分かった。
このドキュメンタリーは、登場人物が、基本的に自分のためではなく誰かのために戦っている。たから観ていて心を打たれるのではないかと思った。
ドキュメンタリーの冒頭タイトル表示で、”WE THE PEOPLE->WEED THE PEOPLE“とアニメーションで”WE”の後に”ED”が挿入される。どういう意味なのかと思ったら、”We The People”は、ホワイトハウスのWebサイトで、米国政府に対する請願を受け付けるシステムらしい。そういえば、辺野古署名で利用したことがあるのを思い出した。