IoT(Internet of Things)は、モノのインターネットと言われます。ただ、その定義は曖昧です。IoTの定義を考察するためだけに、86ページにも及ぶ資料があるほどです。
Towards a definition of the Internet of Things(IoT)
http://iot.ieee.org/images/files/pdf/IEEE_IoT_Towards_D efinition_Internet_of_Things_Revision1_27MAY15.pdf
2つのIoT
IoTは、大きく2つの意味で用いられます。1つは、クラウドやサーバ上のAIで高度な処理を行い、その結果をスマートフォンなどで可視化するようなシンプルな仕組みです。例えば、目的地までの経路検索などが代表的な例です。
もう1つは、産業やシステムをモノとして捉え、それらをつないで異なる技術分野や産業分野を統合するものです。
GE社は、Predixと呼ばれるIoTの産業機器向けプラットフォームを提供していますが、その説明の文章が、このような大規模なIoTをうまく表しています。
Industrial Internet of Things(IIoT)は、マスメディア等で言われているIoTとは大きく異なる。IIoTは、ポットや目覚まし時計用ではない。
GE Predix Architecture and Services
https://d154rjc49kgakj.cloudfront.net/GE_Predix_Architecture_and_Services-20161128.pdf
このような大掛かりなシステムをつなごうとした時、実際にはどうやってつなげば良いのか悩みますが、それぞれのシステムが公開するAPI(Application Programming Interface)同士ををつなぎ合わせると考えるとイメージが具体的になります。
IoTとAPI
APIは、ソフトウェアの世界で用いられる言葉です。あるソフトウェアとソフトウェアをつなぐ時、それぞれのソフトウェアの詳細を完全に把握しようとすると、とても大変です。その代わりとして、つなぐ時に最低限知っておくべき決まりごとだけを情報として公開し、それにさえ従えば目的通りにソフトウェアをつなぐことができるようにしたものがAPIです。
IoTでシステムや産業をモノとして捉え、それらをつなぐ時、各システムや産業が公開するAPIの情報だけに注意してつなぎ合わせれば、複雑なシステムも容易に実現できます。例えば、これまではそれぞれの産業分野で保有していた、あまり明確ではないビジネスの慣例なども、APIという機能である程度明確になるかもしれません。そういった意味で、確かにIoTは世の中を変えるかもしれません。
オープンデータとAPI
このような、APIを通した情報提供の取り組みの1つに、自治体のオープンデータがあります。
自治体の公共データを随時公開するオープンデータサイトです。
自治体オープンデータ自治体の公共データを随時公開するオープンデータサイトです。
このサイトでは、福岡市や北九州市の統計情報などが公開されています。過去に集計した静的なデータだけではなく、動的なデータも公開されています。動的なデータとしては、例えば1時間ごとの福岡市内16箇所の直近48時間の大気環境測定データが公開されています。
動的なデータのAPIとIoT
動的なAPIを利用して複数の産業システムを接続すれば、いろいろなことが行えます。例えば、電車の混雑度の動的なデータから、その混雑度に応じて運賃を動的に変更することも技術的には可能でしょう(ただ、技術的には可能であっても、社会に受け入れられるかどうかは別の話ですが)。
動的なデータを使ったIoTは、世の中の無駄をなくし、効率的で便利な社会を実現するでしょう。しかし、このような効率的で余裕のないシステムは、ある突発的なデータによって、リーマンショックのような予測不能な連鎖反応を引き起こす可能性もはらんでいます。また、それ自体は何でもない平凡なちょっとしたデータの変化が、何かの緊急システムに影響を与える可能性もゼロではありません。