Intel Atomプロセッサのクロック問題

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The Registerというサイトの記事によると、IntelのAtom C2000というプロセッサに致命的な問題があるそうです。

Intel’s Atom C2000 chips are bricking products – and it’s not just Cisco hit

Intel's Atom C2000 chips are bricking products – and it's not just Cisco hit
Chipzilla and Switchzilla won't confirm connection but the writing is on the wall

この記事が指す致命的な問題とは、Atomプロセッサのチップから出力されるLPC_CLKOUT0とLPC_CLOCKOUT1という信号が機能を停止し、その結果、システムが永久に起動(ブート)しなくなるというものです。

Problem:
The SoC LPC_CLKOUT0 and/or LPC_CLKOUT1 signals (Low Pin Count bus clock outputs) may stop functioning.
Implication: If the LPC clock(s) stop functioning the system will no longer be able to boot.

https://www-ssl.intel.com/content/dam/www/public/us/en/documents/specification-updates/atom-c2000-family-spec-update.pdf

The Registerの記事では、部品名は出していないものの、Ciscoの発表したある製品に対する注意事項が、この問題を指しているのではないかと推測しています。
  • Cisco製品で使用されている、ある部品に問題がある。
  • 部品の稼働時間が約18カ月経過すると、通常以上の割合で故障する製品が増加する。
  • 18ヶ月というのは、製造時からの時間ではなく、運用時間(ランタイム)。
  • 一度製品が故障すると、その製品は二度と起動しなくなる。
  • 問題のある部品の供給者は公表できない。
Clock Signal Component Issue
Clock Signal Component Issue

LPCとは何か

プロセッサから出力されるLPC_CLKOUT0とLPC_CLOCKOUT1という信号は、LPCというインターフェース信号の一部です。LPCはLow Pin Countの略です。パソコンなどのコンピュータは、電源投入時、ブートROMというメモリから起動に必要な情報を読み取ります。LPCは、このようなメモリのアクセスに利用されるインターフェースです。

LPC

LPC

LPCの主な特徴は次の通りです。

  • 基本的に7本の信号線で構成される
  • データとアドレス信号は、独立しておらず、信号線を共有する(マルチプレクス)
  • データとアドレス信号は、双方向バス
  • クロック周波数は33MHz
この問題は、LPCのクロックラインが正常に動作しなくなり、その結果LPCに接続されているブートROMなどから情報が読み取れず、二度と起動しなくなるという現象のようです。

問題の原因として考えられること

プロセッサのようなLSIの設計は、通常フロントエンドとバックエンドという工程に分かれています。フロントエンドで行うことは、そのLSIが行う機能の論理回路設計です。バックエンドで行うことは、フロントエンドで設計した論理回路のレイアウトと配線です。フロントエンドの設計で、18ヶ月後に故障率が増加する機能を作り込むことは通常考えられないため、この問題はバックエンド工程での問題と推測されます。

エレクトロマイグレーション

18ヶ月後に故障率が増加する原因として一番最初に思いつくのは、エレクトロマイグレーションです。エレクトロマイグレーションとは、金属原子が移動する現象です。LSI中のトランジスタは、金属配線で接続されています。エレクトロマイグレーションが進むと、金属配線が正常に機能しなくなり、LSIの故障が発生します。

まとめ

通常でも18ヶ月間運用すれば、機器は一定の割合で故障します。このため、Atomチップが搭載された製品の最終ユーザーにとっては、各メーカーで従来から行なわれている保証システムを利用して機器の故障に対応すれば良いだけかもしれません。どちらかというと、製品の最終ユーザーへの影響よりも、プロセッサ・メーカーと最終製品製造メーカー間への影響が大きい問題かもしれません。
しかし、これまで数々のプロセッサを製造してきたIntelであっても、このような問題が発生するというのは興味深いことです。
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