強制処分と任意処分

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「刑事弁護人」を読んだ。著者は弁護士の亀石倫子さん。ある事件の捜査で、令状なくGPSが使用されたことは適法なのか、違法なのかが裁判で争われ、最高裁判所は「令状のないGPS捜査は違法」との判決を出した。「刑事弁護人」を読むと、なんとなく知っていた強制捜査や任意捜査といった言葉の意味や、令状のないGPS捜査が違法と考えられる理由がよく理解できる。

強制処分と任意処分

犯罪の犯人を発見したり、証拠の収集等を行う捜査には、強制捜査(強制処分)と任意捜査(任意処分)がある。

強制処分

  1. 強制処分とは、「個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段」を意味する
  2. 強制処分は、法律の根拠がなければ行うことができない(強制処分法定主義)
  3. 強制処分は、裁判所が発付した令状が無ければ行うことができない(令状主義)

1.の強制処分の意味については、判例(昭和50(あ)146 道路交通法違反、公務執行妨害)に記載がある。

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2.の強制処分法定主義については、刑事訴訟法第197条1項に次のような記載がある。

第百九十七条 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない

3.の令状主義については、日本国憲法第35条等に次のような記載がある。

第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合(現行犯逮捕)を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

「刑事弁護人」によると、令状には次のような種類がある。

刑事訴訟法で定められた令状には「逮捕状」「鑑定処分許可状」「勾留状」「捜索差押令状」「検証許可状」がある。通信傍受法の「通信傍受令状」もそうだ。

亀石倫子; 新田匡央. 刑事弁護人 (講談社現代新書) 講談社.

任意処分

強制処分を除くすべての捜査が任意処分(任意捜査)に該当する。任意捜査に裁判所の令状は必要ない。捜査は、なるべく任意捜査の方法によって行わなければならない。

第九十九条 捜査は、なるべく任意捜査の方法によつて行わなければならない。

本件の最高裁判所の判決

本件(平成28(あ)442  窃盗,建造物侵入,傷害被告事件)の最高裁判所の判決は、裁判例検索で全文を見ることができる。

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GPU捜査は、次のような理由で、令状がなければ行うことができないと判決が出された。

前記のとおり,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は,個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして,刑訴法上,特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる(最高裁昭和50年(あ)第146号同51年3月16日第三小法廷決定・刑集30巻2号187頁参照)とともに,一般的には,現行犯人逮捕等の令状を要しないものとされている処分と同視すべき事情があると認めるのも困難であるから,令状がなければ行うことのできない処分と解すべきである

判決文の理由部分には弁護士名が記載されている。

弁護人亀石倫子ほかの上告趣意のうち,憲法35条違反をいう点は,後記のとおり,原判決の結論に影響を及ぼさないことが明らかであり,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

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