ベーシックインカムとは、生活できるだけの十分なお金を全員に支給するシステムです。
2016年6月、スイスでベーシックインカムを導入するかどうかの国民投票が行われました。結果、圧倒的多数で否決されたようです。
スイスの国民投票では導入が否決されましたが、フィンランドでは導入の最終調整に入っているそうです。
ベーシックインカム
ベーシックインカムとは
ベーシックインカムは、最低限生活に必要なお金を国が給付するシステムですが、完全に概念や制度が統一されている訳ではありません。先進国では、次のような目的や考えで導入が検討されているようです。
- ディジタル化やAIの進歩で作業の自動化が進んでいる。この結果、少ない人数で仕事が行えるようになり、将来失業者が増えることは避けられない。そうであれば、失業者を減らすことに腐心するよりも、ベーシックインカムという選択肢を検討してはどうか。
- 国の複雑な給付や補助の制度を、ベーシックインカムに一本化してシンプルにする。その結果、それらの制度を維持する間接的なコストが下がる。
貧困対策としてのベーシックインカム
しかし、収入が少なく、生きるか死ぬかのぎりぎりで生きている人々が存在する国では導入の目的も異なります。「グローバル・ベーシック・インカム入門」(著訳 岡野内正)では、ナミビア、ブラジル、インド、アラスカ、イランの現地で取材したベーシックインカム導入実験の様子が紹介されています。これらの国では、ベーシックインカムが生きる希望になっていることがわかります。また、ぎりぎりの生活を送っている人には、ベーシックインカムは人間の尊厳を取り戻し、社会を変えるための制度であることが理解できます。次の言葉が印象的です。
『権力を取らずに世界を変える』とは、資本主義の無残を否定しつつ、また社会主義をめざす国家権力の剥奪も腐敗への道として否定する、メキシコに住む哲学者ジョン・ホロウェイの著書の題名だ。権力の集中を防ぐには、徹底的な分割しかない。分割されたひとりひとりの力が、うまく重なり合えば、いつのまにか世界は変わる。
「グローバル・ベーシック・インカム入門」著訳 岡野内正
日本の場合
ベーシックインカムの基本的なコンセプトは、
- 国の複雑な給付や補助の制度を、ベーシックインカムに一本化してシンプルにする。その結果、それらの制度を維持する間接的なコストが下がる。
というものです。日本でベーシックインカムの導入が検討される場合、本来の趣旨とは異なる、単なる一般市民のコスト削減を”ベーシックインカム”という名称で実施されないか心配です。
生き方の選択肢
多くの人は、人生の大半を労働することに費やします。働くことが大好きな人もいるでしょうが、仕方なく働いている人もいるでしょう。ベーシックインカムが給付されれば、生活の基盤が保障され、自分が人生をかけてやりたいことに挑戦できる可能性が高まるかも知れません。
- 起業するもよし。
- 芸術活動をするもよし。
- 何もしないのもよし。
そして、これまで通り何も変わらない生活をすることも、もちろん選択肢の一つです。