IEEE Spectrum 2016年2月号に「自動車の自動運転」についての記事が掲載されています。次のような内容です。
自動車の自動運転の問題は、技術だけではない。人が自動車の運転席に乗っている必要があるなど、自動運転に法律が追いついていない。
自動運転になっても事故は起こるだろうが、その場合、誰が責任を負うのか?いくら支払うのか?もし事故が起こると、設計欠陥の訴訟として扱われるだろうと法律家は考えている。これは、次の点でメーカーにとっては脅威だ。
・誰が勝っても裁判費用が高い。数億円になるだろう。
・裁判結果が予測できない。PL法でどう解釈するか。
・リコールの問題
・懲罰的損害賠償の問題これらのリスクを考えると、メーカーの潜在的な法的コストは、人が運転する車より自動運転車の方が高い。自動車事故の損害額の中央値は160万円、一方、PL訴訟の場合は7,480万円(1ドル=100円として)。
このような訴訟の解決方法の一つは、人間の運転者とコンピュータの運転者を同じと考えることだ。事故の時の感情は関係なく、挙動のみが考慮される。例えば、コンピュータの運転者が赤信号を直進して起こした事故は、責任を問われるが、この場合は、人に課せられる損害賠償と同じ額がメーカーに課せられる。
現在、車の95%は駐車場に止まっているという。つまり、5%しか稼働していない。自動運転とカーシェアリングで、必要な時だけ車を利用できれば、このような無駄はなくなる。車の販売会社にとっては驚異だろうが。また、自動運転は都市の設計を変えるだろう。それは、今の都市が、人間が運転する車を中心に設計されているからだ。
(Self-Driving Cars Will Be Ready Before Our Laws Are)
Self-Driving Cars Will Be Ready Before Our Laws ArePutting autonomous vehicles on the road isn’t just a matter of fine-tuning the technology
人間が運転する自動車と自動運転の自動車が共存する場合、考慮すべき点の一つが「すべての人が規則を守って運転するとは限らない」ということです。例えば、
- 赤信号でも完全には停止しないで、青になるまで少しづつ前進する
- 法定速度+10Km/hまではOK
といったようなマイ・ルール(もしくはある地域の暗黙ルール)で走っている自動車の中で、自動運転の自動車はどのように対処するのでしょう。自動運転の自動車だけが規則を守ることは難しいでしょう。このような状況に置かれた場合、自動運転の自動車は法規をどのように判断するのでしょうか。
また、自動車の自動運転の普及によって、自分で運転しようとする人が減ると
- 自動運転は免許不要なので、教習所はどうなるのか。
- 自動車保険(のマーケット)はどうなるのか。
- 車の所有数、販売台数はどうなるのか。
- バスやタクシーはどうなるのか。
といったように、影響を受ける世の中の仕組みは計り知れません。