グラス・イズ・グリーナー(2019年)は、アメリカの大麻の歴史に関するドキュメンタリー映画。Netflixで視聴することができる。
映画の冒頭で、次のような問いが投げかけられる。
- 現在、アメリカでは各地で大麻の合法化が進んでいる(MEDICAL(医療用) 36州、RECREATIONAL(娯楽用) 10州が合法)。何故、今まで違法だったのか?
- 何故、今になって合法化が進んでいるのか?
アメリカの大麻の歴史
アメリカの大麻の歴史は、次のウェブサイトにまとめられている。
- およそ百年前、大麻賛同者の筆頭はジャズ界だった。
- 大麻が社会問題になったのは、テキサス州エルパソとルイジアナ州ニューオリンズで有色人種の愛用が報告されていたから。
- カンナビスの呼び方をマリファナと変えたのは、メキシコを連想させるのが目的だった。
- 大麻によって、人種間の文化交流が起こることを、白人が恐れていた。
- 1920年代になって、大麻を違法とする州が出てきた。
- 1937年にアメリカで大麻は事実上禁止された。
ハリー・アンスリンガー
アメリカの大麻の話に必ず出てくる人物、ハリー・アンスリンガー。映画によると、徹底的な人種差別主義者、作り話の名人で、大麻をパブリックエネミーとしてでっち上げたという。
ラガーディア報告書
1939年、ラガーディアNY市長が大麻の包括的報告書を作成した。この報告書は、大麻は無害で、犯罪にも無関係、暴力と大麻に関連を認められない、また、中毒性はなく、アンスリンガーの提唱するような話は皆無だと断言していた。しかし、この報告書は無視され、政府は科学に基づいた政策決定ではなく、プロパガンダや人種差別主義を選んだ。
ニクソン大統領の元内政政策部長ジョン・アーリックマンが語ったコメントが端的に問題を表している。
戦争に反対することも黒人であることも違法にすることはできない。だが、大衆にヒッピーとマリファナ、黒人とヘロインを連想させることで、両方を厳しく犯罪化することができた。そして、その両方を重く犯罪化すれば、それらのコミュニティを混乱させることができる。
How to win the war on drugs by Dan Baum
Report: Nixon’s war on drugs targeted black people | CNN PoliticsOne of Richard Nixon’s top advisers and a key figure in the Watergate scandal said the war on drugs was created as a pol...
問いかけへの答え
一つ目の問い、”何故、今まで違法だっがのか?”の答えは、人種差別。
そして二つ目の問い、”何故、今になって合法化が進んでいるのか?”の答えは、
白人は、自分の都合で法律を変える。
David Banner(Hip Hop Artist & Activist)
活動家たち
映画に登場する大麻活動家達は、これまでの歴史に対して怒りを内に秘めながら、それを論理的に説明することができる、魅力的な人が多い。
大麻産業に資本が流入しても、有色人種は資本を得るのが難しい。
ほとんどの投資会社は安心できる投資先を選ぶ。繰り返し大麻逮捕された有色人種よりもね。
どんなに知識と資格があっても、僕に百万ドル投資するより自分たちと同類の方が気が楽だ。大麻産業は急速に成長して、難易度が上がってきた。有色人種の救済が急務だ。特に、麻薬戦争にまきこまれた人々がこの産業で成功できるように。Jesce Horton(Cannabis Entrepreneur)
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一方、アメリカ最大級の麻薬事業展示会カナコンの、ある出展者の言葉がとても印象的。
インタビュアー:
先駆者たち-かつて麻薬を栽培して売り、収監された人達-に収入を得る機会を与えるべきだと思わないか?出展者:
それは難しいな。おおよそ商売が下手だろ?家で栽培したことがあるからといって、免許を出して事業化という訳にはいかない。なぜなら大麻は立派な産業だからだ(because at the end of the day, this still is an industry.)。大麻常習者ではなくビジネスを知る人間がやる。連中はだいたいが大麻常習者だろ?
大麻と音楽
80年代のニューヨーク、ブロンクスで誕生した音楽がヒップホップだと初めて知った。
大麻の歴史は人種差別の歴史であり、音楽は政治的であることがわかった。
この映画は「音楽に政治を持ち込むな」と主張する人におすすめかも知れない。
大麻が合法化されても、これまで合法化のために活動してきた人が、必ずしも恩恵を受ける訳ではないという現実がせつない。