食品産業に潜む腐敗は、食べ物に関するドキュメンタリー番組。Netflixで視聴できる。2020年4月の段階で、12のエピソードが公開されている。
「ハイになれる食べ物(High on Edibles)」は、アメリカの大麻合法化による大麻ビジネスの急成長に焦点を当てたエピソード。大麻合法化のドキュメントは、合法化の良い部分に焦点を当てた内容の番組が多いが、この番組は、合法化の負の部分に焦点を当て、必要な規制を伴わない大麻合法化に警鐘を鳴らす内容となっている。
大麻食品
大麻食品は、誰にでも食べやすいように、一般的な食べ物に似せて作られている。例えば、グミ、チョコレート、クッキーといったように、見た目では普通のお菓子と区別がつかない。普通のお菓子と同じような感覚で食べれば大麻成分を摂取できるので、喫煙に抵抗がある人も、THC(Tetrahydrocannabinol)やCBD(Cannabidiol)といった大麻成分を摂取しやすい。大麻食品は、見た目ではTHCやCBDがどの位含まれているのかわからない。食べ物に入っているTHCやCBDの量は、その食品の成分ラベルに記載された内容を信じるしかない。
喫煙による摂取との違い
一見、喫煙で大麻成分を摂取するよりも、食べ物で摂取するほうが安全そうな気がするが、実はそうでもない。
大麻を吸った場合、THCは肺から血液によって脳に取り込まれる。一方、食べ物で摂取した場合は、血液によって肝臓に蓄えられ、そこでΔ9-THCが11-Hydroxy-THCという成分に変化する。11-Hydroxy-THCは、血中から脳内への移行が速く進むため、肺から脳に取り込む場合よりも影響が大きくなるという。
また、喫煙の場合は大麻の効果がすぐに表れるが、大麻食品の場合は効果が表れるのに時間がかかる。そのため、効果が表れる前に大麻食品を過剰摂取してしまうという危険性もある。
法規制
合法化に規制が追い付いていないことが理由で、問題が生じている。合法化された州と合法化されていない州があることから、商品含まれるTHCの規制も州によって異なる。THCが10~30ミリグラム含まれている大麻食品もあれば、1000ミリグラムのTHCが含まれている大麻食品もある。商品の製造者は、それぞれ独自に商品の検査を研究機関に依頼している。どのような検査が行われているかはわからないので、消費者は商品のラベルに表示される含有量を信用するしかない。現在市場に出回っている商品には、THCが入っていないと表示されているにもかかわらず、THCが入っているものも多数見つかっているという。
子供の誤飲
大麻食品には、アルコールやたばこのような、子供の誤飲を抑止するような商品へのパッケージやラベルの規制が存在しない。子供が好きなアメやグミに似せた大麻のお菓子を製造することに規制はない。子供は体が小さいので、誤って大麻成分の入ったお菓子を食べると、過剰摂取になりやすい。
Understanding Marijuanaの著者、ミッチ・アーレイワイン氏(DR. MITCH EARLEYWINE)は番組で次のように語っている。
大麻を使用中は、新しい情報を処理することができない。ハイになって学校に行っても、何も学べない。また、その事に気付かない。講義を理解したと思っても、実際は情報を吸収できていない。
ROTTEN
「食品産業に潜む腐敗」の、英語版のタイトルは”ROTTEN”。直訳すると、”酷い食べ物、クソみたいな食べ物”といった意味か。英語ではシンプルなOneワードの”ROTTEN”が、”食品産業に潜む腐敗”という、長い日本語のニュアンスを表現できるということが印象深い。