ガタカは、1997年にリリースされたSF映画。主人公は、子供の頃からの夢である宇宙飛行士になって土星に旅立つことを目指す。
時代設定
映画の舞台は、それほど遠くない未来の地球。この世界では、普通の方法で”自然に”生まれる子供がいる一方、遺伝子操作でデザインされて生まれる子供がいる。遺伝子操作で生まれる子供は、両親が子供をカスタマイズできる。例えば、身長や皮膚の色を決めたり、ある能力を高めたり、病気のリスクなどを排除したりといった操作ができる。ピアノ演奏会では、12本指のピアニストが、12本指用に作曲された曲を演奏するような世界。この世界では、就職でも紙に書いた履歴書よりもDNAに刻み込まれた情報が最も重要視される。遺伝子による差別は違法になっているが、法には大した力はない世界。
「ガタカ」は、このような世界で”自然に”生まれた主人公が、土星の惑星タイタンへの宇宙飛行を目指す物語。映画のジャンルはSF(Science Fiction)だけれども、SFっぽい宇宙シーンはほとんど出てこない。その代わりに、シンプルで時代感のない建物や衣装のデザインが、未来っぽいSFの雰囲気を醸し出している。
ガタカ(Gattaca)の由来
Gattacaは、DNA(デオキシリボ核酸)を構成する4つの塩基(アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C))の頭文字を並べたものらしい。映画の中では、主人公が所属する土星ロケットの打ち上げを行う会社の社名が「ガタカ」となっている。
登場人物
ガタカの主な登場人物は次の5人。
役名 | 俳優 | 物語での役割 |
ヴィンセント
Vincent Anton Freeman |
イーサン・ホーク
Ethan Hawke |
この物語の主人公。
普通の方法で”自然に”生まれる。土星への宇宙飛行を目指す。 |
ジェローム
Jerome Eugene Morrow |
ジュード・ロウ
Jude Law |
水泳界のスーパースターだったが、事故で下半身不随に。遺伝子操作で生まれる。 |
アイリーン
Irene Cassini |
ユマ・サーマン
Uma Thurman |
ガタカ社でのビンセントの同僚。
遺伝子操作で生まれるが、心不全の恐れがある。 |
アントン
Anton Freeman
|
ローレン・ディーン
Loren Dean |
ヴィンセントの弟。遺伝子操作で生まれる。
職業は捜査官。 |
ラマー
Dr. Lamar |
ザンダー・バークレー
Xander Berkeley |
ガタカ社で職員のDNA検査などを行う医師 |
ヴィンセントとジェローム
主人公のヴィンセントは、ガタカ社に入社して宇宙飛行士になるために、交通事故で下半身不随となったジェロームの協力を得ることにする。ジェロームから優秀なDNAの提供を受ける代わりに、ヴィンセントが生活費などを支払う契約を結ぶ。ヴィンセントは、ジェロームになりすましてガタカ社に入社するが、なりすましが誰かにバレるのを防ぐために、些細なことにも気を抜けない。そのの努力が壮絶。髪の毛やまつ毛1本を落としても、そこからDNAが採取されてなりすましがバレる可能性があるので、毎日の入念なシャワーが欠かせない。一難驚いたのが、身長差の補正方法。ヴィンセントはジェロームよりも5cm身長が低かったのて、それを補うために、”物理的に”5cm高さを継ぎ足して身長差を補正する。
ヴィンセントとアントン
ヴィンセントは、生まれた直後に、推定寿命は30.2歳、心臓疾患の可能性が99%と判定される。これを残念に思ったヴィンセントの両親は、弟アントンの誕生には遺伝子操作の道を選ぶ。ヴィンセントと遺伝子操作で生まれた弟アントンは、成長するにつれて、徐々に能力の差が開いてくる。しかし、何をやっても弟に勝てないヴィンセントは、ある日、弟と海での遠泳競争に勝つことができる。これがきっかけとなり、ヴィンセントは自分の可能性に希望を持つようになる。
ヴィンセントとそれぞれの希望
遺伝子操作で生まれた登場人物も、それぞれ問題をかかえている。
ヴィンセントにDNAを提供するジェロームは、遺伝子操作で生まれてきたにもかかわらず、水泳競技では銀メダル止まり。金メダルを取ることができなかった。また、ガタカの同僚であるアイリーンも、遺伝子操作で生まれてきたにもかかわらず、心不全の疑いがあり、宇宙飛行をあきらめていた。
社会的に不利な立場のヴィンセントが、自分の力で不可能を可能にして、そこに実在しているという事実が、ジェロームやアイリーンの考え方を変えていく。
ガタカ社でDNA検査を行う医師のラマーも、息子に遺伝子疾患があるが、ヴィンセントから息子の希望を見出す。
旅立ち
ヴィンセントが宇宙に旅立つ日、ジェロームも旅立つ。それぞれの旅立ちで同じ意味を持つカットが交互に映し出される。ジェロームがどのような気持ちで旅立ったのかはわからないが、別の世界で金メダルに挑戦する希望を持って旅立ったのかもしれない。
人間の可能性
「ガタカ」は、生まれ持ったDNA情報が全てであり、後天的な努力が認められない社会を描いている。この映画は、
- 希望を持つことが不可能に思える絶望の中に、あなたは希望を見いだすことができるか
- 誰かが決めた仕組みに従うだけの人生で終わることに納得できるか
- 生まれた時に人生の残り時間を宣告されたなら、あなたはどう生きるか
という問いを投げかけているように思う。
同じようなルーチンワークの日常が続いている時、「ガタカ」は、人生は有限であることをあらためて思い出させてくれる。