私が最初に誰かのために作ったプログラムは、成績管理プログラムです。依頼主は、当時通っていた高校の体育の先生です。確か、私が高校1年生か2年生の時だったと思います。当時は今と違って、そもそもパソコンを持っている人がほとんど周りにいませんでした。また、各メーカーのパソコンは、今と違ってハードウェアの仕様で商品の差別化を行っていました。つまり、あるパソコン用のプログラムは、そのままでは別のメーカーのパソコンはおろか、同じメーカーでも違う機種のパソコンでは動作しませんでした。そんな中、なぜか私と体育の先生は、同じメーカーの、しかも同じ機種のパソコンを持っていることがわかり、「それなら成績管理のプログラムを作ってくれ」という話になりました。

プログラミング作成
成績管理のプログラム
作成した成績管理プログラムは、確か次のような仕様でした。
使用パソコン | シャープMZ-1500 |
プログラミング言語 | BASIC |
プログラムの機能 | 生徒名と身長、体重、運動の計測値(例えば50M走の時間など)を管理。 データベースを画面に表示して、名前と数値を入力。 データベースの各項目で並べ替え(ソート)ができる。 データベースのロード、セーブが出来る。 データベースは後から追加、修正ができる。 |

管理プログラムのイメージ
今であれば、エクセルで簡単に計算できてしまうような内容です。しかし当時のパソコンではエクセルはおろか、WindowsのようなOSすら一般的ではありませんでした。BASICという言語を使って、画面表示や文字入力など、すべての機能をプログラムする必要がありました。
制作、納品、アフターサポート
「成績管理プログラム」の制作にどの位の時間がかかったかはあまり覚えていません。おそらく数週間だったのではないかと思います。ただ、完成したプログラムを先生に納品した後で、何度も仕様変更や機能修正の要求が入ったことは憶えています。「えー今更そんなの無理だよ..」といった、実際の仕事でもよくありがちなことを思いながら、渋々機能の修正要求に応じていました。
報酬
「成績管理プログラム」の報酬として、お金以外の物品を色々もらいました。確か、先生が買ったけど(おそらくあまり読まなかった)プログラミングの書籍や、もう遊ばなくなったゲームソフトなどを譲ってもらったように記憶しています。
今と当時のプログラミング環境の違い
今(2010年代)と当時(1980年代)のプログラミングを比較すると、次のような違いがあるように思います。
1980年代
- 情報収集: 雑誌や書籍
- プログラミングの特徴: BASICかアセンブラで書く。
- うまく動作しない場合の対処法: 動くまで考える。動くまで試す。または諦める。
- プログラムの入手方法: 雑誌に掲載されたプログラムの打ち込み、パッケージソフト(カセットテープ)の購入
2010年代
- 情報収集: インターネット、雑誌や書籍
- プログラミングスタイル: プログラミング言語は様々。APIを使いこなす。
- うまく動作しない場合の対処法: インターネットで調べる。
- プログラムの入手方法: フリーアプリのダウンロード、パッケージソフトの購入
一番の違いは情報の入手性です。当時はパソコン雑誌くらいしか情報源がありませんでした(少なくとも中高生には)。なにしろ、パソコン雑誌の「読者からのお便りコーナー」に、同じパソコンを持っている近所の仲間を見つけるために実家の住所と電話番号が堂々と掲載されていた古き良き(?)時代です。
しかし、情報が限られていたことが、逆にパソコンに興味をそそられた理由だったのかも知れません。当時は、雑誌に掲載されていたゲームプログラム(数十ページにも及ぶ16進数のマシン語の羅列)を自分で打ち込むといったことをよく行っていましたが、今考えると狂気としか思えません。今から中高生時代を振り返ると、なぜあそこまでコンピュータに興味を持っていたのかよくわかりません。
今、もし自分が中高生だったら
今、もし中高生だったとしたら「パソコンでプログラミングをしたいと思うか?」と考えると、少し疑問です。プログラミングに限らず、ちょっと検索すればほとんどの答えはすぐに見つかります。検索して答えを見つけた時点で、もうやったつもりになって満足してしまいそうです。
高校生の時に成績管理のプログラムを作ったことを未だに良く覚えているのは、自分の作ったものが他人の役に立ったのが嬉しかったのだと思います。そういう意味では、今もし自分が中高生であれば、プログラミング以外のことを通して他人の役に立つという経験をしていたのではないかと想像します。
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