ソフトバンクのARM買収

本当に驚きました。ソフトバンクのARM買収。 ARMって買えるんだ・・・

ARMとその製品

ARMは、プロセッサ(CPU)のIPコア(設計データ)を販売している会社(本社はイギリス)です。プロセッサのIPコアとは、パソコンに入っているIntelのCPUのようなものです。ただし、IntelのCPUのように、それ自体が一つのチップとして製品化されることは少なく、ほとんどの場合は半導体チップの中に組み込まれる形で利用されます。ARMのCPUは、iPhoneなど、現在販売されているほとんどのスマートフォンの半導体チップに採用されています。また、ゲーム機器のNintendo 3DSやPlayStation Vitaにも、ARMのCPUが採用されています。つまり、ほどんどの家庭には、ARMのCPUが組み込まれた何らかの製品があるということです。

驚いた理由

驚きの理由の一つは、組み込みプロセッサの市場をほぼ独占しているARMが買収されたという点です。以前、IntelがFPGAメーカーのAlteraを買収した時にも驚きましたが、今回はそれ以上に驚きました。Alteraは、FPGA業界での2強のうちの1社です。2強のもう1社はXilinxです。FPGA業界は、XilinxとAlteraが競い合っているという状況がありまます。このため、IntelにAlteraが買収されても、FPGA業界としての変化は1/2です。しかし、ARMの場合は違います。ARMと同様のプロセッサIPコアを販売している会社はいくつかありますが、AlteraとXilinxという関係に匹敵するほどの競合は存在しません。 もう一つの理由は、ソフトバンクが日本製のプロセッサにこだわらなかったという点です。ソフトバンクのARM買収は、「モバイルの次はIoT(Intenet of Things)」ということを見据えた買収と報道されています。個人的には、ARMのCPUが他社に比べて技術的に非常に優れているとは思いません。純粋に技術的な観点で言えば、日本製のCPUと大差ないでしょう。しかし、「日本製などにこだわらずに世界で一番良いものを買った」ことで、IoTなどの次の事業に対するソフトバンクの強いメッセージを感じます。

技術的な視点

CPUのIPコアは、半導体の設計データに過ぎません。ソフトウェアと同様に、単なるテキストデータです。ある半導体の面積で、ある性能を出そうと考えた場合、誰が作ってもあまり違いがありません。半導体の回路設計は、決められた論理回路設計のルール内で行うので、誰が作っても違いが出せないということです。

ARMが普及している理由

スマートフォンなどでARMが大きなシェアを獲得しているのは、CPUがシステムの差別化要因ではないということが、大きな理由ではないかと考えます。具体的には、

  • 技術的に見ると、プロセッサは誰が作ってもあまり大差ない。
  • 機能として、プロセッサ自体は差別化要因ではない。遅ければコア数を増やしたり、動作周波数をあげれば良いだけ。
  • CやJavaといった高級言語を使い、OS上でアプリを動かすのであれば、プロセッサが何かを意識することはほとんどない。正直、アーキテクチャは何でも良い。
  • 普及しているので扱える技術者が多い。

ARMがスマートフォンやゲーム機器に採用され、そこそこの市場シェアを獲得した時、「CPU自体には特にこだわらない。何でも良い」という業界の動向によって、加速度的にシェアが高まったのではないかと考えます。

IntelがスマートフォンでARMに勝てない理由

パソコンで使われているCPUは、ほとんどがIntel製です。Intelがパソコンで高いシェを獲得できている理由も、実は「CPUは何でも良い」からではないかと思います。「昔から使っていて、特に困らないのでx86でよい」ということではないでしょうか。現在、ARMがスマートフォンなどで高いシェアを獲得しているのも、同じ理由ではないかと思います。つまり、Intelは、自らのパソコンでの高いシェアと同じ理由によって、スマートフォンではARMに負けているともいえるのではないでしょうか。そういう意味では、IoTやAIの分野では、ARMやIntel以外のメーカーが高いシェアを獲得する可能性も十分に考えられます。なぜなら「プロセッサはなんでもよい」からです(少なくともIoTは)。 ただ、ソフトバンクがARMを買収した本当の理由は、実はIoTではないのかも知れませんが。

一番印象に残ったところ

報道によると、買収の話は、ARMの会長が休暇中にヨットでトルコに立ち寄った時に、そのヨットハーバーで持ちかけたそうです。「ARMの会長の休暇は、ヨットでトルコなのか」。ソフトバンクのARM買収で一番印象に残りました。


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