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石丸技術士事務所のブログ

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DLPFCと幻の痛み

2015/10/05

3ヶ月以上も続くような腰の痛みを「慢性腰痛」(英語では"chronic low back pain")と呼ぶそうです。厚生労働省の調査では、腰痛に悩む人は日本で2800万人、その半分が慢性腰痛に悩まされているのだとか。日本人の4人に1人が腰痛に悩んでいるということは、4人に1人は興味を持っているテーマだともいえます。

腰痛の悩みを持つ人は多い

腰痛の悩みを持つ人は多い

NHKスペシャル 腰痛・治療革命 〜見えてきた痛みのメカニズム〜

NHKの番組によると、慢性腰痛の多くは、脳が作り出す幻の痛みなのだそうです。実際には腰が治っていたとしても、脳のある部分の活動が衰えると幻の痛みに悩まされるといいます。番組で紹介されていた慢性腰痛の発生メカニズムは次の通りです。

  1. 腰の骨や筋肉の異常によって炎症が起きる。
  2. 炎症が起きたという情報は、神経を通して脳に伝えられる。
  3. 脳では神経細胞が興奮し、痛みの回路が生まれる。この痛みの回路ができて、初めて腰痛を感じる。
  4. 腰の炎症が治まっても、痛みの回路の興奮はすぐには落ち着かない。
  5. この興奮は、脳のDLPFCという部分が指令をだしてを鎮めることで、痛いという感覚をなくす。ここで、DLPFCの活動が衰えていると、痛みの回路の興奮状態を鎮める指令が出にくくなる。
  6. 腰は治っているのに、痛いという感覚がリセットされない状態が続く。
幻の痛みのメカニズム

幻の痛みのメカニズム

このように、慢性腰痛の多くは脳が痛いと感じているだけの幻想なのだとか。

コンピュータシステムに当てはめてみると
「周辺機器からエッジトリガのインタラプトが発生したので、CPUがインタラプトルーチンにジャンプしたが、何らかの理由でインタラプトのステータスをクリアできない状態が発生し、インタラプトルーチンから抜け出せない」といった感じでしょうか。

DLPFCとは

DLPFC(Dorsolateral prefrontal cortex)背外側前頭前野と呼ばれる脳の部分です。前頭前野とは、次のように非常に重要な機能を受け持つ脳の部位です。

前頭前野はヒトをヒトたらしめ,思考や創造性を担う脳の最高中枢であると考えられている。
前頭前野は系統発生的にヒトで最もよく発達した脳部位であるとともに,個体発生的には最も遅く成熟する脳部位である。一方老化に伴って最も早く機能低下が起こる部位の一つでもある。この脳部位はワーキングメモリー、反応抑制、行動の切り替え、プラニング、推論などの認知・実行機能を担っている。また、高次な情動・動機づけ機能とそれに基づく意思決定過程も担っている。さらに社会的行動、葛藤の解決や報酬に基づく選択など、多様な機能に関係している。
引用:脳科学辞典
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%89%8D%E9%A0%AD%E5%89%8D%E9%87%8E

幻の痛みを消す方法

腰痛の人は脳のDLPFCの体積が極端に少なく、DLPFCの活動が衰えているのだそうです。何故DLPFCが衰えるかというと、「またぎっくり腰になるのでは?」といった痛みへの恐怖が関係しているそうです。そのような腰痛に対する恐怖を取り除く訓練を行えばDLPFCを活性化できるというのですが、実際にはどうすれば良いのでしょうか。
その方法は非常に簡単で、怖がらなくて良いと脳に教えるだけなのだそうです。番組では、"腰痛は幻想だ"という内容の映像を見たり、簡単な体操を行ったりすることで恐怖をなくしていました。
具体的には、次の2つの方法が紹介されていました。

1. 映像を見る
「腰痛は治っている、脳が作り出した幻想だ」という内容の短い映像見るだけ。もう治っているということを意識することで映像で腰痛の正しい知識を得て、無用な恐怖をなくす。(10日間)

2. 1回3秒の簡単な体操
1回3秒、腰に手を当てて上半身を後ろに反らす体操を行う。(毎日最低一回、2週間)。

この2つの方法で、番組内では慢性腰痛者175名のうち、56%の人の腰痛が改善していました。(逆にいえば、約1/2の人には効果がなかった。)

まとめと感想

映像を見ることや簡単な体操で慢性腰痛が改善すれば、まさに"腰痛・治療革命"と言えそうです。脳の幻想が作り出した慢性腰痛と同様に、日常で現実だと思っていることも、実は幻想だということがあるのかも知れません。ただ、「"多くの"慢性腰痛は幻かもしれないが、"すべての"慢性腰痛が幻とは限らない」という点には注意が必要でしょう。

リンク

NHKスペシャル 腰痛・治療革命 〜見えてきた痛みのメカニズム〜
http://www.nhk.or.jp/kenko/nspyotsu/

番組中で紹介されている研究者の論文
David Seminowicz, University of Maryland,
Effective Treatment of Chronic Low Back Pain in Humans
Reverses Abnormal Brain Anatomy and Function
http://www.researchgate.net/publication/51147367_Effective_Treatment_of_Chronic_Low_Back_Pain_in_Humans_Reverses_Abnormal_Brain_Anatomy_and_Function

前頭前野 - 脳科学辞典
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%89%8D%E9%A0%AD%E5%89%8D%E9%87%8E

腰痛診療ガイドライン2012
http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0021/G0000533/0001

投稿者プロフィール

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石丸技術士事務所: 石丸顕二(技術士 情報工学部門)

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